旅枕奇譚③自慢の花

日暮れまでに麓の村に着かなければと、足を速めて山道を歩いていた。
思ったより早く川の近くまで来た。
このままこの川に沿って歩けばすぐ人里に出る。
少し休んでいこうと思い、川岸の大きな岩に腰を下ろし、
足だけ水につけて涼をとった。
夏の盛りは過ぎたとはいえ、日が空の中ほどにある時間はまだ汗がにじむほど暑い。

しばらく岩に座って涼んでいると、
木々の間から大きな花のつぼみが現れた。

ad7b5c02-5985-4ceb-ad95-88f2cc274e55

蕾は私の顔のあたりまで下がってくると、

ゆっくりとその花弁広げた。

3f1f0b15-f513-46dd-ba2c-a18e2703ee9d

花の中にはとても美しい少女の顔があった。
雪のように白い肌に、花と同じうっすらと赤い唇。

少女は私のほうをみてほう、とため息を出すように微笑んだ。

da92cb1c-14e7-40b4-a554-113e1783bb6c

そしてまた花はまたゆっくりと閉じ、
木々の間に消えて行った。

それからそのまま山を降り、
暗くなる前に麓の村に着いた。

その村でさっき見た花の話をすると、
村のものは「ああ、時々見せにくるんだよ。」と言った。

あの花はあの少女を誰かに見せたかったらしい。
なるほど、確かにあの美しい少女の微笑みは自慢したくなるだろう。

bab2e6db-bf5f-41ab-a524-0d60ee9a2682

Leave a Reply

Fill in your details below or click an icon to log in:

WordPress.com Logo

You are commenting using your WordPress.com account. Log Out /  Change )

Google photo

You are commenting using your Google account. Log Out /  Change )

Twitter picture

You are commenting using your Twitter account. Log Out /  Change )

Facebook photo

You are commenting using your Facebook account. Log Out /  Change )

Connecting to %s

This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.

WordPress.com.

Up ↑

%d bloggers like this: